基本的構造、能力
同じ脊椎動物である哺乳類と基本的に身体構造が異なる、その理由は①空を飛ぶから ②移動速度が早い ③移動距離が長いからである。そのために次のような特徴がある
1.体重を軽くする工夫
骨も中が空洞である。歯も持たない胃の代わりに砂嚢で擦りつぶす、小便・大便の区別なく尿酸の混じったフンをする。排出口も一つで総排泄腔と呼ばれる。
2.移動速度が早くても、呼吸困難にならない肺
ハヤブサは時速180km急降下時は約300km、アマツバメ時速100km、海抜3~5000mでも呼吸困難にならない。呼気吸気が混じらない構造、人間の肺は呼気吸気が混じる
3.視力は人間より優れている
獲物を探すため、また捕食者を早く見つけるため、視力は人間の約10倍以上遠くまで見え、人間が3原色なのに紫外線まで見える。また夜中も移動するため暗視力も優れている
4.聴力は弱いと言われるが、超低周波を感じるともいわれる。但し疑問符付き
耳タブを持たないが、遠方の空気振動を骨振動で感じることができるとも言われている。
テネシー州でアメリカムシクイが、約400km離れた「巨大積乱雲」による竜巻の音を感知?して飛び立ったとされている。
5.移動したい範囲を把握できる地図記憶
貯食行動する野鳥、渡り鳥は、自分の行きたい方向に正確に移動できる心的地図を記憶している、これについては下記の「渡り鳥」参照
知能指数?
「カラスは頭がよい」下手にカラスをいじめたりすると、人間の顔を覚えていて襲ってきたりする。同じ種類でも寒冷地に住む野鳥は、木の実を土の中などに隠す行動(貯食行動 )した場所を覚えておく必要があるので、脳の重さも体重も多いという。
ヤマガラの貯食はエゴノキ、アカマツ、ツバキ、スダジイ、イチイなどであり、樹皮の隙間や土の中に隠す、隠した約3~5000カ所の場所をほぼ覚えているという。もちろん他の鳥に食べられてしまうこともある。
脳の性能は体重に対する脳の重さだけで決まるわけではない。その動物にとって特別に必要な能力に関する部位が重要。それは運動神経、貯食した場所を記憶する能力、渡りのための方角、繁殖するための技術などであり、そのため人間の大脳、小脳、海馬(記憶を一時貯蔵、整理する脳の部位)とは構造さえも異なるようです。
1973年に脳化指数という体重と脳重での比較計算式が発表された、しかしこの比較方式は古い。1989年に35種の野鳥の海馬の体積を比較した結果として、貯食を行う種は、しない種の約2倍の体積であった。大きいのは、コガラ、ハシブトカラ、ヒガラなどであり、比較小さいのはシジュウカラ、アオガラ。
ハチドリは花の種類別に咲く時期と、その花の場所を数千本覚えている。ハチドリの海馬はキツツキの2~5倍の大きさがある
学術的裏付けはないが日本国内で野鳥の賢い順は①カラス ②ハヤブサ、タカなど ③アカゲラ・コガラ、ヤマガラ ④カモメ らしい。、今は禁止されたお祭りの出し物で、小さなテーブルの上に参道と神社があり、ヤマガラが賽銭をあげ、オミクジをつまんでくるのが見られた。懐かしい風景を思い出す。
種類 | 体重 | 脳重 | 脳比率 |
マッコウクジラ | 50,000kg | 9.0kg | 0.02% |
インドゾウ | 7,000kg | 6.0kg | 0.08% |
人間 | 65kg | 1.4kg | 2.2% |
ハシボソガラス | 700g | 10g | 1.4% |
カレドニアカラス | 230g | 7.5g | 3.2% |
アメリカコガラ | 12g | 0.6g | 5.5% |
南太平洋のニューカレドニア島のカレドニアカラスは2014年英国BBC放送で、簡単に針金をフックにまげてクチバシで届ないエサをゲット、8段階のパズルを解いて獲物をゲットしたので有名になった。
※脳化指数の計算式
脳化指数=定数×脳の重量÷体重の3分の2乗(最近は4分の3乗)
※定数は、ネコの「脳の重量÷体重の4分の3乗」が0.12になってしまうのを「1」とするもの、または人間を10とする一覧表もある。検索すると定数をかけない指数が最近出回っている。
エクセルで計算する場合、体重をH、脳重をBとすると
脳化指数= B/power(H,2/3) で算出される 人間==体重65kg 脳重1.4kgだと0.86
渡り鳥、頭の中に地図
体重がわずか12グラムしかない極小の渡り鳥ズグロアメリカムシクイでも、約2700kmを約3日で越冬地に行き、また春にはカナダへ戻ることができる。
渡り鳥は、約4000kmの先までも季節に移動できるものもいる。その能力の基礎は何か、①見慣れた建物等(陸標)の記憶、②太陽の方位に対する感受性、③磁場の傾きまで感知する能力、④超低周波音の感知能力、加えて⑤これらにより作製した心的地図を保存する能力、⑥過去の経験を記憶する能力などが研究された。
実験の一つ、カナダの繁殖地からメキシコの越冬地にわたる渡り鳥ミヤマシシトドをシアトルを30羽(半分は幼鳥)捕獲し、目隠し状態で飛行機でニュージャージー州プリンストンに移動させ放鳥した。彼らは数時間後に方向を定めメキシコへ向かって飛び立ち、幼鳥の数羽を除き無事到着した。
渡り鳥のコースを日の出、日没、緯度経度を記憶するジオロケーターを取り付けて調査した結果、幼鳥は大体直線コースだが、成鳥は途中に危険な地域がある場合は迂回する。つまり1年以上前の経験を覚えている。
◎海馬(記憶を一時貯蔵、整理する脳の部位)が、渡りや貯食する野鳥は他の鳥に比較して体重比極めて大きい。人間と異なり、その位置、構造が異なることが発見された。
◎地磁気センサーらしき細胞組織があるらしいことが発見された
まだ、実証されてないが、野鳥は頭の中に地図を保存しているのではないか
人間でも個人差が大きい、ある友人は過去一度きた何本にも分岐する広いスキー場でコース案内してくれた、一方うちの上さんは、極端な方向音痴で二度来た道でも右が左と間違える。
参考図書、「鳥、驚異の知能」ジェニファー・アッカーマン著鍛原多恵子訳、講談社2018